某君兄弟數(shù)人はいずれもわたしの中學(xué)時(shí)代の友達(dá)で、久しく別れているうち便りも途絶えがちになった。先頃ふと大?。à郡い婴绀Γ─祟荆à─盲空撙ⅳ毪嚷劋い?、故郷（こきょう）に帰る途中立寄ってみるとわずかに一人に會(huì)った。病気に罹ったのはその人の弟で、君がせっかく訪(fǎng)ねて來(lái)てくれたが、本人はもうスッカリ全快して官吏候補(bǔ)となり某地へ赴任したと語(yǔ)り、大笑いして二冊(cè)の日記を出した。これを見(jiàn)ると當(dāng)時(shí)の病狀がよくわかる。舊友諸君に獻(xiàn)じてもいいというので、持ち帰って一読してみると、病気は迫害狂の類(lèi)で、話(huà)がすこぶるこんがらがり、筋が通らず出鱈目（でたらめ）が多い。日附（ひづけ）は書(shū)いてないが墨色（すみいろ）も書(shū)體も一様でないところを見(jiàn)ると、一時(shí)（じ）に書(shū)いたものでないことが明らかで、間々（まま）聯(lián)絡(luò)（れんらく）がついている。専門(mén)家が見(jiàn)たらこれでも何かの役に立つかと思って、言葉の誤りは一字もなおさず、記事中の姓名だけを取換えて一篇にまとめてみた。書(shū)名は本人平癒後自ら題したもので、そのまま用いた。七年四月二日しるす。
一
今夜は大層月の色がいい。
乃公（おれ）は三十年あまりもこれを見(jiàn)ずにいたんだが、今夜見(jiàn)ると気分が殊（こと）の外（ほか）サッパリして初めて知った、前の三十何年間は全く夢(mèng)中であったことを。それにしても用心するに越したことはない。もし用心しないでいいのなら、あの趙家（ちょうけ）の犬めが何だって乃公の眼を見(jiàn)るのだろう。
乃公が恐れる理（わけ）がある。
二
今夜はまるきり月の光が無(wú)い。乃公はどうも変だと思って、早くから気をつけて門(mén)を出たが、趙貴翁（ちょうじいさん）の目付（めつき）がおかしいぞ。乃公を恐れているらしい。乃公をやっつけようと思っているらしい。ほかにまだ七八人もいるが、どれもこれも頭や耳を密著（くっつ）けて乃公の噂をしている。乃公に見(jiàn)られるのを恐れている。往來(lái)の人は皆そんな風(fēng)だ。中にも薄気味の悪い、最もあくどい奴は口をおッぴろげて笑っていやがる。乃公は頭の天辺（てっぺん）から足の爪先（つまさき）までひいやりとした。解った。彼らの手配がもうチャンと出來(lái)たんだ。乃公はびくともせずに歩いていると、前の方で一群の子供がまた乃公の噂をしている。目付は趙貴翁と酷似（そっくり）で、顔色は皆鉄青（てっせい）だ。一體乃公は何だってこんな子供から怨みを受けているのだろう。とてもたまったものじゃない。大聲あげて「お前は乃公にわけを言え」と怒鳴ってやると彼らは一散に逃げ出した。
乃公と趙貴翁とは何の怨みがあるのだろう。往來(lái)の人にもまた何の怨みがあるのだろう。そうだ。二十年前、古久（こきゅう）先生の古帳面（ふるちょうめん）を踏み潰したことがある。あの時(shí)古久先生は大層不機(jī)嫌であったが、趙貴翁と彼とは識(shí)合（しりあ）いでないから、定めてあの話(huà)を聞伝（ききつた）えて不平を引受け、往來(lái)の人までも乃公に怨みを抱くようになったのだろう。だが子供等は一體どういうわけだえ。あの時(shí)分にはまだ生れているはずがないのに、何だって変な目付でじろじろ見(jiàn)るのだろう。乃公を恐れているらしい。乃公をやっつけようと思っているらしい。本當(dāng)に恐ろしいことだ。本當(dāng)に痛ましいことだ。
おお解った。これはてっきりあいつ等のお袋が教えたんだ。
三
一晩じゅう睡（ねむ）れない。何事も研究してみるとだんだん解って來(lái)る。
彼等は――知県（ちけん）に鞭打たれたことがある。紳士から張手（はりで）を食（くら）ったことがある。小役人から嚊（かかあ）を取られたことがある。また彼等の親達(dá)が金貸からとっちめられて無(wú)理死（むりじに）をさせられたことがある。その時(shí)の顔色でもきのうのようなあんな凄いことはない。
最も奇怪に感じるのは、きのう往來(lái)で逢ったあの女だ。彼女は子供をたたいてじっとわたしを見(jiàn)詰（みつ）めている?！甘澹à福─丹?、わたしゃお前に二つ三つ咬（か）みついてやらなければ気が済まない」これにはわたしも全くおどかされてしまったが、あの牙ムキ出しの青ッ面（つら）が何だかしらんが皆笑い出した。すると陳老五（ちんろうご）がつかつか進(jìn)んで來(lái)て、わたしをふんづかまえて家（うち）へ連れて行った。家（うち）の者はわたしを見(jiàn)ても知らん振りして書(shū)斎に入ると鑰（かぎ）を掛け、まるで鶏鴨（とりがも）のように扱われているが、このことはどうしてもわたしの腑に落ちない。
四五日前に狼村（おおかみむら）の小作人が不況を告げに來(lái)た。彼はわたしの大（おお）アニキと話(huà)をしていた。村に一人の大悪人（だいあくにん）があって寄ってたかって打殺（うちころ）してしまったが、中には彼の心臓をえぐり出し、油煎（あぶらい）りにして食べた者がある。そうすると肝が太くなるという話(huà)だ。わたしは一言（ひとこと）差出口（さしでぐち）をすると、小作人と大アニキはじろりとわたしを見(jiàn)た。その目付がきのう逢った人達(dá)の目付に寸分違いのないことを今知った。
想い出してもぞっとする。彼等は人間を食い馴（な）れているのだからわたしを食わないとも限らない。
見(jiàn)たまえ?！ⅳ闻挨艘Г撙膜い皮浃毪妊预盲郡韦狻⒋髣?shì)の牙ムキ出しの青面（あおつら）の笑も、先日の小作人の話(huà)も、どれもこれも皆暗號(hào)だ。わたしは彼等の話(huà)の中から、そっくりそのままの毒を見(jiàn)出し、そっくりそのままの刀を見(jiàn)出す、彼等の牙は生白（なまじろ）く光って、これこそ本當(dāng)に人食いの道具だ。
どう考えても乃公は悪人ではないが、古久先生の古帳面に蹶躓（けつまづ）いてからとても六（む）ツかしくなって來(lái)た。彼等は何か意見(jiàn)を持っているようだが、わたしは全く推測(cè)が出來(lái)ない。まして彼等が顔をそむけて乃公を悪人と言い布（ふ）らすんだからサッパリわからない。それで想い出したが、大アニキが乃公に論文を書(shū)かせてみたことがある。人物評(píng)論でいかなる好人物でもちょっとくさした句があると、彼はすぐに圏點(diǎn)（けんてん）をつける。人の悪口（あくこう）を書(shū)くのがいいと思っているので、そういう句があると「翻天妙手（ほんてんみょうしゅ）、衆(zhòng)と同じからず」と譽(yù)め立てる。だから乃公には彼等の心が解るはずがない。まして彼等が人を食おうと思う時(shí)なんかは。
何（なん）に限らず研究すればだんだんわかって來(lái)るもので、昔から人は人をしょっちゅう食べている。わたしもそれを知らないのじゃないがハッキリ覚えていないので歴史を開(kāi)けてみると、その歴史には年代がなく曲り歪んで、どの紙の上にも「仁道義徳」というような文字が書(shū)いてあった。ずっと睡（ねむ）らずに夜中まで見(jiàn)詰めていると、文字の間からようやく文字が見(jiàn)え出して來(lái)た。本一ぱいに書(shū)き詰めてあるのが「食人」の二字。
このたくさんの文字は小作人が語(yǔ)った四方山（よもやま）の話(huà)だ。それが皆ゲラゲラ笑い出し、気味の悪い目付でわたしを見(jiàn)る。
わたしもやっぱり人間だ。彼等はわたしを食いたいと思っている。
四
朝、靜坐（せいざ）していると、陳老五が飯を運(yùn)んで來(lái)た。野菜が一皿、蒸魚(yú)（むしうお）が一皿。この魚(yú)の眼玉は白くて硬く、口をぱくりと開(kāi)けて、それがちょうど人を食いたいと思っている人達(dá)のようだ。箸をつけてみると、つるつるぬらぬらして魚(yú)かしらん、人かしらん。そこではらわたぐるみそっくり吐き出した。
「老五、アニキにそう言ってくれ。乃公は気がくさくさして堪らんから庭內(nèi)を歩こうと思う」
老五は返事もせずに出て行ったが、すぐに帰って來(lái)て門(mén)を開(kāi)けた。
わたしは身動(dòng)きもせずに彼等の手配を研究した。彼等は放すはずはない。果してアニキは一人のおやじを引張って來(lái)てぶらぶら歩いて來(lái)た。彼の眼には気味悪い光が満ち、わたしの看破りを恐れるように、ひたすら頭を下げて地に向い、眼鏡の橫べりからチラリとわたしを眺めた。アニキは言った。
「お前、きょうはだいぶいいようだね」
「はい」
「きょうは何先生（かせんせい）に來(lái)ていただいたから、見(jiàn)てもらいな」
「ああそうですか」
実際わたしはこの親爺が首斬（くびきり）役であるのを知らずにいるものか。脈を見(jiàn)るのをつけたりにして肉付を量り、その手柄で一分の肉の分配にあずかろうというのだ。乃公はもう恐れはしない。肉こそ食わぬが、膽魂（きもたま）はお前達(dá)よりよっぽど太いぞ。二つの拳固を差出して彼がどんな風(fēng)に仕事をするか見(jiàn)てやろう。親爺は坐っていながら眼を閉じて、しばらくはさすってみたり、またぽかんと眺めてみたり、そうして鬼の眼玉を剝き出し
「あんまりいろんな事を考えちゃいけません。靜かにしているとじきに好くなります」
フン、あんまりいろんな事を考えちゃいけません、靜かにしていると肥りまさあ！ 彼等は余計(jì)に食べるんだからいいようなものの乃公には何のいいことがある。じきに「好くなります」もないもんだ。この大勢(shì)の人達(dá)は人を食おうと思って陰（かげ）になり陽(yáng)（ひなた）になり、小盾になるべき方法を考えて、なかなか手取早く片附けてしまわない、本當(dāng)にお笑草（わらいぐさ）だ。乃公は我慢しきれなくなって大聲上げて笑い出し、すこぶる愉快になった。自分はよく知っている。この笑聲の中には義勇と正気がある。親爺とアニキは顔色を失った。乃公の勇気と正気のために鎮(zhèn)圧されたんだ。
だがこの勇気があるために彼等はますます乃公を食いたく思う。つまり勇気に肖（あやか）りたいのだ。親爺は門(mén)を跨いで出ると遠(yuǎn)くも行かぬうちに「早く食べてしまいましょう」と小聲で言った。アニキは合點(diǎn)した。さてはお前が元なんだ。この一大発見(jiàn)は意外のようだが決して意外ではない。仲間を集めて乃公を食おうとするのは、とりもなおさず乃公のアニキだ。
人を食うのは乃公のアニキだ！
乃公は人食（ひとくい）の兄弟だ！
乃公自身は人に食われるのだが、それでもやっぱり人食の兄弟だ！
五
この幾日の間は一歩退いて考えてみた。たといあの親爺が首斬役でなく、本當(dāng)の醫(yī)者であってもやはり人食人間だ。彼等の祖師李時(shí)珍（りじちん）が作った「本草（ほんそう）何とか」を見(jiàn)ると人間は煎じて食うべしと明かに書(shū)いてある。彼はそれでも人肉を食わぬと言うことが説き得ようか。
家（うち）のアニキと來(lái)ては、全くそう言われても仕方がない。彼は本の講義をした時(shí)、あの口からじかに「子（こ）を易（か）へて而（しか）して食（くら）ふ」と言ったことがある。また一度、偶然ある好からぬ者に対して議論をしたことがある。その時(shí)の話(huà)に、彼は殺されるのが當(dāng)然で、まさにその肉を食（くら）いその皮に寢（い）ぬべしと言った。當(dāng)時(shí)わたしはまだ小さかったが、しばらくの間胸がドキドキしていた。先日狼村（ろうそん）の小作人が來(lái)て、肝を食べた話(huà)をすると、彼は格別驚きもせずに絶えず首を揺り動(dòng)（うご）していた。そら見(jiàn)たことか、おお根が殘酷だ。「子（こ）を易（か）へて而（しか）して食（くら）ふ」がよいことなら、どんなものでも皆易（か）えられる。どんな人でも皆食い得られる。わたしは彼の講義を迂濶に聞いていたが、今あの時(shí)のことを考えてみると、彼の口端には人間の脂がついていて、腹の中には人を食いたいと思う心がハチ切れるばかりだ。
六
真黒けのけで、晝かしらん夜かしらん。趙家の犬が哭き出しやがる。
獅子に似た?jī)葱摹筏吻优常à绀Δ溃?、狐貍（こり）の狡猾…?BR>
一
今夜は大層月の色がいい。
乃公（おれ）は三十年あまりもこれを見(jiàn)ずにいたんだが、今夜見(jiàn)ると気分が殊（こと）の外（ほか）サッパリして初めて知った、前の三十何年間は全く夢(mèng)中であったことを。それにしても用心するに越したことはない。もし用心しないでいいのなら、あの趙家（ちょうけ）の犬めが何だって乃公の眼を見(jiàn)るのだろう。
乃公が恐れる理（わけ）がある。
二
今夜はまるきり月の光が無(wú)い。乃公はどうも変だと思って、早くから気をつけて門(mén)を出たが、趙貴翁（ちょうじいさん）の目付（めつき）がおかしいぞ。乃公を恐れているらしい。乃公をやっつけようと思っているらしい。ほかにまだ七八人もいるが、どれもこれも頭や耳を密著（くっつ）けて乃公の噂をしている。乃公に見(jiàn)られるのを恐れている。往來(lái)の人は皆そんな風(fēng)だ。中にも薄気味の悪い、最もあくどい奴は口をおッぴろげて笑っていやがる。乃公は頭の天辺（てっぺん）から足の爪先（つまさき）までひいやりとした。解った。彼らの手配がもうチャンと出來(lái)たんだ。乃公はびくともせずに歩いていると、前の方で一群の子供がまた乃公の噂をしている。目付は趙貴翁と酷似（そっくり）で、顔色は皆鉄青（てっせい）だ。一體乃公は何だってこんな子供から怨みを受けているのだろう。とてもたまったものじゃない。大聲あげて「お前は乃公にわけを言え」と怒鳴ってやると彼らは一散に逃げ出した。
乃公と趙貴翁とは何の怨みがあるのだろう。往來(lái)の人にもまた何の怨みがあるのだろう。そうだ。二十年前、古久（こきゅう）先生の古帳面（ふるちょうめん）を踏み潰したことがある。あの時(shí)古久先生は大層不機(jī)嫌であったが、趙貴翁と彼とは識(shí)合（しりあ）いでないから、定めてあの話(huà)を聞伝（ききつた）えて不平を引受け、往來(lái)の人までも乃公に怨みを抱くようになったのだろう。だが子供等は一體どういうわけだえ。あの時(shí)分にはまだ生れているはずがないのに、何だって変な目付でじろじろ見(jiàn)るのだろう。乃公を恐れているらしい。乃公をやっつけようと思っているらしい。本當(dāng)に恐ろしいことだ。本當(dāng)に痛ましいことだ。
おお解った。これはてっきりあいつ等のお袋が教えたんだ。
三
一晩じゅう睡（ねむ）れない。何事も研究してみるとだんだん解って來(lái)る。
彼等は――知県（ちけん）に鞭打たれたことがある。紳士から張手（はりで）を食（くら）ったことがある。小役人から嚊（かかあ）を取られたことがある。また彼等の親達(dá)が金貸からとっちめられて無(wú)理死（むりじに）をさせられたことがある。その時(shí)の顔色でもきのうのようなあんな凄いことはない。
最も奇怪に感じるのは、きのう往來(lái)で逢ったあの女だ。彼女は子供をたたいてじっとわたしを見(jiàn)詰（みつ）めている?！甘澹à福─丹?、わたしゃお前に二つ三つ咬（か）みついてやらなければ気が済まない」これにはわたしも全くおどかされてしまったが、あの牙ムキ出しの青ッ面（つら）が何だかしらんが皆笑い出した。すると陳老五（ちんろうご）がつかつか進(jìn)んで來(lái)て、わたしをふんづかまえて家（うち）へ連れて行った。家（うち）の者はわたしを見(jiàn)ても知らん振りして書(shū)斎に入ると鑰（かぎ）を掛け、まるで鶏鴨（とりがも）のように扱われているが、このことはどうしてもわたしの腑に落ちない。
四五日前に狼村（おおかみむら）の小作人が不況を告げに來(lái)た。彼はわたしの大（おお）アニキと話(huà)をしていた。村に一人の大悪人（だいあくにん）があって寄ってたかって打殺（うちころ）してしまったが、中には彼の心臓をえぐり出し、油煎（あぶらい）りにして食べた者がある。そうすると肝が太くなるという話(huà)だ。わたしは一言（ひとこと）差出口（さしでぐち）をすると、小作人と大アニキはじろりとわたしを見(jiàn)た。その目付がきのう逢った人達(dá)の目付に寸分違いのないことを今知った。
想い出してもぞっとする。彼等は人間を食い馴（な）れているのだからわたしを食わないとも限らない。
見(jiàn)たまえ?！ⅳ闻挨艘Г撙膜い皮浃毪妊预盲郡韦狻⒋髣?shì)の牙ムキ出しの青面（あおつら）の笑も、先日の小作人の話(huà)も、どれもこれも皆暗號(hào)だ。わたしは彼等の話(huà)の中から、そっくりそのままの毒を見(jiàn)出し、そっくりそのままの刀を見(jiàn)出す、彼等の牙は生白（なまじろ）く光って、これこそ本當(dāng)に人食いの道具だ。
どう考えても乃公は悪人ではないが、古久先生の古帳面に蹶躓（けつまづ）いてからとても六（む）ツかしくなって來(lái)た。彼等は何か意見(jiàn)を持っているようだが、わたしは全く推測(cè)が出來(lái)ない。まして彼等が顔をそむけて乃公を悪人と言い布（ふ）らすんだからサッパリわからない。それで想い出したが、大アニキが乃公に論文を書(shū)かせてみたことがある。人物評(píng)論でいかなる好人物でもちょっとくさした句があると、彼はすぐに圏點(diǎn)（けんてん）をつける。人の悪口（あくこう）を書(shū)くのがいいと思っているので、そういう句があると「翻天妙手（ほんてんみょうしゅ）、衆(zhòng)と同じからず」と譽(yù)め立てる。だから乃公には彼等の心が解るはずがない。まして彼等が人を食おうと思う時(shí)なんかは。
何（なん）に限らず研究すればだんだんわかって來(lái)るもので、昔から人は人をしょっちゅう食べている。わたしもそれを知らないのじゃないがハッキリ覚えていないので歴史を開(kāi)けてみると、その歴史には年代がなく曲り歪んで、どの紙の上にも「仁道義徳」というような文字が書(shū)いてあった。ずっと睡（ねむ）らずに夜中まで見(jiàn)詰めていると、文字の間からようやく文字が見(jiàn)え出して來(lái)た。本一ぱいに書(shū)き詰めてあるのが「食人」の二字。
このたくさんの文字は小作人が語(yǔ)った四方山（よもやま）の話(huà)だ。それが皆ゲラゲラ笑い出し、気味の悪い目付でわたしを見(jiàn)る。
わたしもやっぱり人間だ。彼等はわたしを食いたいと思っている。
四
朝、靜坐（せいざ）していると、陳老五が飯を運(yùn)んで來(lái)た。野菜が一皿、蒸魚(yú)（むしうお）が一皿。この魚(yú)の眼玉は白くて硬く、口をぱくりと開(kāi)けて、それがちょうど人を食いたいと思っている人達(dá)のようだ。箸をつけてみると、つるつるぬらぬらして魚(yú)かしらん、人かしらん。そこではらわたぐるみそっくり吐き出した。
「老五、アニキにそう言ってくれ。乃公は気がくさくさして堪らんから庭內(nèi)を歩こうと思う」
老五は返事もせずに出て行ったが、すぐに帰って來(lái)て門(mén)を開(kāi)けた。
わたしは身動(dòng)きもせずに彼等の手配を研究した。彼等は放すはずはない。果してアニキは一人のおやじを引張って來(lái)てぶらぶら歩いて來(lái)た。彼の眼には気味悪い光が満ち、わたしの看破りを恐れるように、ひたすら頭を下げて地に向い、眼鏡の橫べりからチラリとわたしを眺めた。アニキは言った。
「お前、きょうはだいぶいいようだね」
「はい」
「きょうは何先生（かせんせい）に來(lái)ていただいたから、見(jiàn)てもらいな」
「ああそうですか」
実際わたしはこの親爺が首斬（くびきり）役であるのを知らずにいるものか。脈を見(jiàn)るのをつけたりにして肉付を量り、その手柄で一分の肉の分配にあずかろうというのだ。乃公はもう恐れはしない。肉こそ食わぬが、膽魂（きもたま）はお前達(dá)よりよっぽど太いぞ。二つの拳固を差出して彼がどんな風(fēng)に仕事をするか見(jiàn)てやろう。親爺は坐っていながら眼を閉じて、しばらくはさすってみたり、またぽかんと眺めてみたり、そうして鬼の眼玉を剝き出し
「あんまりいろんな事を考えちゃいけません。靜かにしているとじきに好くなります」
フン、あんまりいろんな事を考えちゃいけません、靜かにしていると肥りまさあ！ 彼等は余計(jì)に食べるんだからいいようなものの乃公には何のいいことがある。じきに「好くなります」もないもんだ。この大勢(shì)の人達(dá)は人を食おうと思って陰（かげ）になり陽(yáng)（ひなた）になり、小盾になるべき方法を考えて、なかなか手取早く片附けてしまわない、本當(dāng)にお笑草（わらいぐさ）だ。乃公は我慢しきれなくなって大聲上げて笑い出し、すこぶる愉快になった。自分はよく知っている。この笑聲の中には義勇と正気がある。親爺とアニキは顔色を失った。乃公の勇気と正気のために鎮(zhèn)圧されたんだ。
だがこの勇気があるために彼等はますます乃公を食いたく思う。つまり勇気に肖（あやか）りたいのだ。親爺は門(mén)を跨いで出ると遠(yuǎn)くも行かぬうちに「早く食べてしまいましょう」と小聲で言った。アニキは合點(diǎn)した。さてはお前が元なんだ。この一大発見(jiàn)は意外のようだが決して意外ではない。仲間を集めて乃公を食おうとするのは、とりもなおさず乃公のアニキだ。
人を食うのは乃公のアニキだ！
乃公は人食（ひとくい）の兄弟だ！
乃公自身は人に食われるのだが、それでもやっぱり人食の兄弟だ！
五
この幾日の間は一歩退いて考えてみた。たといあの親爺が首斬役でなく、本當(dāng)の醫(yī)者であってもやはり人食人間だ。彼等の祖師李時(shí)珍（りじちん）が作った「本草（ほんそう）何とか」を見(jiàn)ると人間は煎じて食うべしと明かに書(shū)いてある。彼はそれでも人肉を食わぬと言うことが説き得ようか。
家（うち）のアニキと來(lái)ては、全くそう言われても仕方がない。彼は本の講義をした時(shí)、あの口からじかに「子（こ）を易（か）へて而（しか）して食（くら）ふ」と言ったことがある。また一度、偶然ある好からぬ者に対して議論をしたことがある。その時(shí)の話(huà)に、彼は殺されるのが當(dāng)然で、まさにその肉を食（くら）いその皮に寢（い）ぬべしと言った。當(dāng)時(shí)わたしはまだ小さかったが、しばらくの間胸がドキドキしていた。先日狼村（ろうそん）の小作人が來(lái)て、肝を食べた話(huà)をすると、彼は格別驚きもせずに絶えず首を揺り動(dòng)（うご）していた。そら見(jiàn)たことか、おお根が殘酷だ。「子（こ）を易（か）へて而（しか）して食（くら）ふ」がよいことなら、どんなものでも皆易（か）えられる。どんな人でも皆食い得られる。わたしは彼の講義を迂濶に聞いていたが、今あの時(shí)のことを考えてみると、彼の口端には人間の脂がついていて、腹の中には人を食いたいと思う心がハチ切れるばかりだ。
六
真黒けのけで、晝かしらん夜かしらん。趙家の犬が哭き出しやがる。
獅子に似た?jī)葱摹筏吻优常à绀Δ溃?、狐貍（こり）の狡猾…?BR>